聖夜の恋人
どこもいっぱいだなー。この時期の休日に一人外で夕食なんてよく考えればカップルだらけのお台場に一人で行くようなものだ。
「矢口さん?」
ラストクリスマスの曲が流れている大きなツリーの下で立ち止まっていると、かすかに声が聞こえたのであたりを見回した。
「やっぱり矢口さんだ」
後ろを向くと走ってきたのか息を切らしている男の子が立っていた。
誰だっけ…。黒のダウンにジーパン姿の可愛い顔の男の子が立っていた。
「矢口さん、俺ですよ。判子屋の小池です」
「あー!」
「矢口さんまた忘れちゃったんですか!」
「ううん、違うの。私服見るの初めてだったから…」
小池君だと気付いたとたんサムライの香りを思い出して心臓が高鳴った。こんなにかっこよく見えるのはイルミネーションのせい?
ツリーの明かりが彼の少し茶色がかった髪とぱっちりとした瞳をキラキラと輝かせていた。
「矢口さんとこんなところで会えるなんて嬉しいっす」彼は恥ずかしそうにそういった。
えっ…。ドキドキが速まった。
「あっもしかしてこれからデートですか?」
「ううん、違うの。これから一人デイナーでもしようかなって思ってて。でもやっぱり一人だと入りづらい時期よね」
「本当ですか!もしよかったら一緒にどうですか?」
一緒に?意外な展開に私はちょっと同様した。でも正直嬉しかった。私は動揺を隠すように落ち着いた口調で言った。
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