聖夜の恋人
「あと…」
「ん?」
「なんでもないです。本当髪型似合ってる」
彼の優しい視線を感じた。
目を合わせたらドキドキが止まらなくなったのですぐに逸らせた。

「この辺でいいよ。今日はありがとう」
「こちらこそ楽しかったです」
「じゃあまたね」
「気をつけて」

切符を買って改札口を抜けると小池君の声が聞こえた気がして振り返った。
彼は走ってきて「矢口さん!今彼氏いますか」と顔を赤くして聞いてきた。
「いないよ」私はすぐに答えた。
「そっか、よかった。あっメールしますね」
彼は安心したような顔をしてそういった。
「うん。おやすみ」
「おやすみなさい」
私はとてもいい気分で最終電車に乗り込んだ。
月曜日になると休日で疲れを十分癒した社会人達が凛とした表情で会社に出社する。
社会人は仕事と遊びの切り替えが大事なんだと新人の頃言われたことがある。学生の頃と違って簡単に休むことは出来ないし度を過ぎた遊びをして二日酔いになっても必ず朝の満員電車には乗り込まなくてはいけない。私は切り替えが上手ではないので週明けの出勤というのは会社に行く楽しみがない限りものすごく憂鬱だ。
頭のぼんやりが取れないまま電車に揺られあと一駅というところでメールが来た。
『おはよう。今から出勤かな?お互いがんばろう!』直樹からだった。
土曜日に交換したメールアドレスには日曜日の昼頃
『昨日は楽しかったです。本当にありがとうございました!今度映画でも見にいきましょう。あっ俺のこと直樹って呼んでくださいね!』
< 19 / 41 >

この作品をシェア

pagetop