聖夜の恋人
そして白ワインと料理が運ばれてきた。ボーイがついでくれて二人で乾杯した。
「んー。美味しい」冷たいワインが喉を潤した。さっぱりとしていてほんのり甘くとても後味の良いワインだった。
「ここのワインは格別だよ。一本すぐにあけてしまうくらい」
「本当。格別ですね」

「矢口さんってやっぱり可愛らしいね」
「えっ何言ってるんですか」顔が火照ってきているのをすぐに感じた。
「いやいや感情豊かっていうかさ、一緒にいて楽しいよ」中川さんは笑ってそういった。甘い香水の香りがふわっとした。
「そんな、中川さんに言われたら照れますよ」嬉しくて仕方なかったが上手く表現できなかった。
それから二人で以前よりもたくさんの話をした。ワインのおかげで緊張が解け、気持ちよく会話をすることができた。
そして私は一番の課題を出した。
「あの、クリスマス。クリスマスって何してますか?」
ステーキを食べている手が止まる。視線がこっちに向けられた。
「クリスマス?今年は特に考えてないな」
「本当ですか?」
「うん。矢口さんはどこか行くの?」
「いや、あの。もしよかったらその日空けといていただけませんか?」緊張して声が裏返った。
「いいよ。俺でいいの?」中川さんはそういって悪戯っぽく笑った。
「もちろん!あ、ありがとうございます!」嬉しくて口元が緩みっぱなしだった。
「じゃあ、横浜あたり行こうか」
横浜…私の一番行きたかった理想の場所だった。
頭の中に妄想が広がる。胸がいっぱいになりワインを飲み干した。
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