聖夜の恋人
「いらっしゃいませ。このブラジャー付け心地がよくてすごく人気なんですよ」売り場に出た。笑えてるか不安になった。
「あらそう?じゃあこれ三色いただこうかしら」いかにもお金持ちそうなおばさんだった。荷物をいっぱい抱えていて幸せそうだった。
「ありがとうございます」精一杯笑顔を作って接客をした。

「お疲れさん」お客さんを送り出したすぐあとに麻紀が来た。
「あっお疲れ!麻紀今日休みだとおもってた」
「そのはずだったんだけどね、人足りないとか言って来させられた。本当むかつく」
「かなりテンション低いもんね」麻紀はイライラしながらタイムカードを押した。
「あんたも元気ないじゃん」
「まぁね。やっぱり私ってうまくいかないのかな」
「何があったのよ」
「ううん。たいしたことないんだけどね、実際に何も起きてないのにただ悩んでるだけ」
「そう。純子の恋愛癖だよそれ」麻紀はそういってあえて何も聞かないでいてくれた。
恋愛癖か…。何かされたわけでもないのにうじうじ悩んでしまうのは自分の勝手な思い込み。そう言い聞かせれば聞かせるほど不安になっていくのが私だった。

レジで事務仕事をしていると麻紀が走ってきた。
「純子、小池君来たよ」
「えっ」ドキッとした。あれからずいぶんメールはしたが会っていなかったのでなんだか緊張した。
「小池君こっちこっち」麻紀が小さく手を振った。彼は軽く会釈しながらこっちに来た。
「どうもー!いやー麻紀さんのお久しぶりっすね」
「本当だね。元気だった?」
「はい!がんばってますよ。あっ矢口さん」後ろにいる私に気付いて照れ笑いを浮かべた。
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