聖夜の恋人
そして私はというと好きな人は常にいるんだけど、誕生日やクリスマスの前になると男がいなくなったり、キスしていい感じになった男の家に呼ばれて浮かれていたら実は彼女いたとか一緒にベットに入ったのに元彼忘れられないからごめん。っていわれたり…はっきりいって可哀相な結末をよく迎える女だ。やられる前にわかってよかったじゃん。ってよくフォローされるけど本人はとても複雑な状況だという事に気付いて欲しい。だからとてもじゃないけどセックスを語れる女とは言えないのだ。
でも今年は中川さんと聖夜のベットインなんてことをしてしまったら私も麻紀のようにセックスを語るつもり。
あーん。考えるだけでドキドキしてくる。
「すいません、すいませーん」
「は、はい」
気付くと若い男が顔を覗き込んでいた。
やべっ。妄想しすぎた。
「すいません、判子屋の小池です」
私がオロオロしているのに気付いたのか彼は自分の名前を名乗った。
「あっ、あーはいはい。いつもお世話になっております」
「どうも。矢口さんにお会いするの久しぶりですね」
彼はそういって笑顔で「ここにサインください」といった。
名前覚えてるなんてすごいな。この子あんまり見ないのに。
「ありがとうございました!」
「こちらこそ、またよろしくお願いします」
私は丁寧にお辞儀をした。
彼はエレベーターに乗ってからもこちらを見て会釈した。
自然と笑顔になった。
あんだけ丁寧にやられると気持ちいいよな。小池君ね。覚えておこう。
「純子、このサイズあるかな」
「マジ?」
麻紀が焦ったように私に「お願い」と頼んできた。
さっきの客が赤い透け感のある下着をものすごく気に入ってしまったらしい。
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