聖夜の恋人
資料は約50人分もあった。
新作の下着についてのものだったので目を通しながら資料をまとめた。
春に合うパステルカラーのものがとても多かった。
クリスマスが終わればお正月が来て、年が明けたと思ったらバレンタインがきて、すぐに三月。
この時期が来ると一年って早いな。ってかならず思う。
春に失恋するより冬に失恋した方が立ち直れそうな気がするのはなぜだろう。

そんなことを思いながら時計を見るとあと10分で昼休みの時間だった。
急に胸がドキドキしてきた。
もう後戻りはできない。

私は小さく深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。

ガチャ。
ドアを開けると中川さんはまだいなかった。主任に小言を言われていたので少し遅れてしまっていた。
「はぁー」なんとなく胸をなでおろした。
そのとき「ごめん!ちょっと仕事が延びちゃって」走ってきたのか少し息を切らしながら中川さんが入ってきた。
「いえいえ、私もさっき来たところなんです」
「そっか。よかった」そう言いながらドアを閉めてこっちへ向かってくるとだんだん甘い匂い鼻を掠めた。
目の前に来た彼を見てやっぱり好きだ。と思った。
「あ、あの」うまく言葉がでてこなかった。
「ん?」窓の光が彼の顔を照らしていて笑顔が眩しかった。手に汗をかいていることに気付き、無理やり言葉を出した。
「あの、昨日…」彼の視線が私の緊張と熱をどんどん上げた。
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