聖夜の恋人
『でも…』
『ずっと家にいたら忘れたいものも忘れられないって!ねっ。』
『うん。ありがとう』
『ううん。八時くらいから始めるみたいだからその前にはよろしくね』
『わかった』
『あっ、こないだ買ったって言ってたワンピース着てきてね』
『うん、いろいろありがとう。じゃあ後でね』

麻紀と電話を切ったときにはワイドショーは終わっていてニュースが始まろうとしていた。
よし、今日はいっぱい飲んで楽しもう。のっちの友達が集まるパーテイは毎年開かれていたが行くのは初めてだった。
のっちの友達…まさか直樹はいないよね。
もし好きな子と来てたら…。あんなに電話もしてしまったし。
直樹のことを考えると少し行くのが気まずくなった。

もう嫌な予想をするのはやめよう。
考え出すと止まらなくなりそうだったのでソファーから降りて支度をし始めた。
ワンピースに着替えてアクセサリーをつけた。ピンクゴールドのハートのネックレスにパールのピアス。
白のワンピースを着て鏡の前に立つと気持ちが明るくなった気がした。
買ってよかったと改めて思えた。髪型は飾り過ぎないで軽く巻くだけにした。
そんなことをしながら時計を見ると六時を過ぎていた。もうこんな時間か。
麻紀に『七時には出れるよ』というメールを入れて携帯をバックの中にしまった。
仕上げのマスカラを塗ろうと化粧台に座るとすぐに携帯が鳴った。
携帯を開いた瞬間胸がドキッと高鳴った。直樹からだった。
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