聖夜の恋人
麻紀はビール片手に枝豆を摘みながらニヤっと笑った。
「私もさすがにそれ考えちゃったよ」
「やっぱり?いやー私の予想だと不倫か若い彼かだね」
「あっ若い男ってのはわかる」
「真っ赤な下着ってのは若い男が好きな色だからね。そうそう、中川さんとのデートには適さないわよ」
「えっ」
「考えてるくせに」
思いっきりそういうことを考えていた私は恥ずかしくなってビールを一気に飲み干した。
「もう一杯」
「あんた明日二日酔いとかなんないでよね」
「大丈夫だって」
私は麻紀より百倍酒が弱い。麻紀は酔った真似はよくするけど実際酔ったのを見たのは数えるくらい。
私はジョッキビール二杯でやられる。しかも実はビールが得意なわけじゃないのですぐに学生が飲むようなカシスやフルーツ系の酒に切り替える。
それに比べて麻紀はビール十杯にワイン、シャンパン、日本酒と麻紀が酔いたいときに付き合うと相当な時間がかかるのだ。
「中川さんてさ、本当に今彼女いないのかな?」
「知らないけど人気はあるよね」
「だよね」
「こないだも告白してフラれた女三人いたらしいよ」
「マジ?」
「確か受付の若めの子と同じ営業の同年代くらいの子。あと事務の子だったかな。でもあいつ人気あるくせに彼女いたっていう噂全然ないじゃん、相当好みにうるさいか実は奥さんいるとかね」
「奥さんはいないよ、たぶん」
「わかんないよーあーゆー男ってモテたいが故に隠してる奴とか多いんだから」
「情報好きなあんたに言われるとマジ萎える」
「あははっ。へこむなよ」
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