聖夜の恋人
麻紀は楽しそうに五杯目になるビールに手をつけた。
この女はこの手の話が大好物なのだ。さらに洞察力に優れているため、情報は誰よりも早いし麻紀のたぶん、きっと、はほぼ確実なのだ。
ちなみに中川さんがいる営業部には麻紀が食った男が多数存在し、今でもよく会話をしているので営業部の話は特に強い。
「でもさ、そろそろ動いたほうがいいんじゃないの?」
「わかってる、でも本当は食事に誘ってもらいたいよね。なんか女から誘うのって微妙じゃない?」
「微妙だね。それは男が付け上がる可能性が高い。誘わせなきゃダメよ」
「どうしたらいいの」
「あんた中川さんの会社のメールアドレス知ってんじゃん?それ使ってアピールするの。あんたアピールすんのは得意じゃん」
「会社のって誰かにバレない?」
「バレないバレない。私、悟とメールエッチしたことあるもん」
「メールエッチって…プライベートでやれっつーの」
「だってそのほうが萌えたんだもん」
麻紀はきゃきゃ。と笑って「だから絶対大丈夫」と念を押した。例が悪いけどなんだかすごく大丈夫な気がした。
「あっそうそう、今日小池君来てなかった?」
「誰?」
「誰ってあんたが応対してた判子屋だよ」
「あー!!うん、来てた!麻紀よく覚えてたね、あの子あんまり来ないから私忘れてたよ」
「あんたもひどい女だねー。あんないい子忘れるなんて」
「確かにいい子だった」
「私あの子一押しだけどなー可愛いし。あんた次来たらちゃんと話てみなよ。」
「麻紀の一押しって久々じゃん。次きたらしっかりチェックしとくよ」
「私の言った意味そのうちわかるよ。まーとりあえずは中川さんに明日からアピールがんばりな」
麻紀はそういってデザートのアイスを頼んだ。酒をたらふく飲んでもデザートが欠かせないとこが麻紀の可愛いとこだ。
小池君と中川さんはぱっと見対照的だったので匂いも対照的なのかな。と思った。
中川さんが甘いから小池君は男らしい匂いのはずだ。
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