聖夜の恋人
それから一週間が過ぎ、中川さんと社内メールは意外にも盛り上がりを見せ、見事ランチを共にできる券を手に入れた。
メールは毎日五回~十回くらいした。好きとは言わずに誉めまくる。趣味とか今はまってることとか広く浅くだが聞きまくる。
私は動き出すと早いのだ。ずっと踏み出せなかった理由は怖かったからだと思う。
中川さんと出会った春、大好きだった彼に振られた。わずか二ヶ月の恋だった。誕生日の少し前だった。
「誕生日はもちろん仕事休むよ。いい店予約しとく。一緒に過ごそう」
「本当!楽しみにしてる」
すごく楽しみだった。初めてそんなことを言ってくれる人と自分も出会えた。と幸せだった。
忙しいっていうのわかってたから逢えないの我慢してたのに、
「優しすぎるよね純子は。俺たち付き合うの早すぎたとおもうんだよね、俺今忙しくて会ってあげられないしさ。別れよう。」
堅い決意だった。泣いても引き止めても無駄だった。
別れは…私はこんなに簡単に済まされてしまう女なのかって悲しくなった。
今となってはあんな適当な男別れてよかった。っておもうけど。
そんな時に、中川さんが現れた。
どこかで私の誕生日を知ったみたいで、「誕生日おめでとう。これからもがんばってね」というメモ書きとチョコレートが置いてあった。
涙が出た。まだ親しくもない私にこんなことをしてくれるなんて、なんていい人なんだろう。と胸が熱くなった。
一目惚れが本当の恋に変わった瞬間だった。
今までの焦って躓いていた恋愛はもう繰り返したくない。すぐ手にいれようと焦って空回りしていた何も残らない恋愛はもうしたくない。
この恋にはかなり気合をいれている。
「矢口さん行こうか」
「はい!」
今日はついに中川さんとランチの日だ。こんなに昼の時間が楽しみだったことは未だかつてなかった。
私と中川さんは美味しいと有名なイタリアンレストランに入った。
ここは人気だから昼に行くと大抵は並ぶか入れないかなのに彼は予約をしていてくれたみたいですぐに入れた。
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