粉雪舞い散る桜の匂い
第一章
始まりの雪
音もなく、静かに降り積もる、三月の雪。
寒くて、冷たくて、
まるで、心に降り積もるかの様にー。
知らないフリをすれば、全部今まで通り。
(大丈夫、落ち着け。何も変わらない、大丈夫…)
だから、
「泣くな…、泣くなっ…」
璃都[リツ]は自分に、何度も、何度も、言い聞かせる。
でも、溢れる涙は止まらなくて、気を抜くと大声で泣いてしまいそうで、膝を抱える掌に力込め、必死に堪える。
冷たい桜の下で蹲り、躯が震えるのは寒さのせいなのか、涙のせいなのか、分からなかった。
もうすぐ桜が咲こうかという三月。
もうすぐ高2になる三月。
草木は芽吹き春を感じさせたが、今日は違った。
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