粉雪舞い散る桜の匂い
 
拭った涙が、また溢れる。


抑えている心が、鼓動が、震える。

寒く、冷たく、深く、溺れてしまいそうだとー


「こっち」
 
声がして、ぐいっと男に腕を掴まれ、リツはハッとなった。

「あたたかいココア、飲みにいこう。きっと暖まる」

優しい声が、掴まれた腕から伝わるぬくもりが、リツをあたたかい場所へと、引き戻した。

 
男の言葉に、違う涙が溢れる、あたたかい涙が。


 その一方、僅かな痛みがリツを捕らえた。


あんなに失いたくなくて、必死だったのに、自分も”同じ”なのかと。

掴まれた腕から伝わるぬくもりが思い知らせる。


でも、今はこのぬくもりに心あたためたくて、振り払う、裏切り者の烙印を。

 許してしまう、自分を…。
 
 全て、先輩のせいにして…。




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