粉雪舞い散る桜の匂い
終章
くゆる煙草と桜の花びら
「雪、あがったか…」
煙草をくゆらせ、サクヤは夜空を見上げる。
「おまたせっ」
ふいに声がして、サクヤは振り返った。
「まだほかほか、あたたかいよ?」
息を切らせ、走ってきた様子のリツがいた。
はい、と抱えた紙袋からサクヤに肉まんを差し出す。
「…ありがとう」
受け取り、サクヤは桜の樹にもたれ、座った。
リツも桜の樹にもたれ、座る。
「煙ばかりじゃ、体に悪いですよ?」
「大丈夫だよ。俺は煙を食べて生きてるから」
「そんな、仙人みたいなコト言ってると、後が大変なんだから」
あ、仙人は霞だっけ、とリツは呟く。
「…今日は、もう来ないかと、思った」
サクヤは煙草をくゆらせ、呟く。