粉雪舞い散る桜の匂い

涙で滲む世界は、粉雪で白く、薄らと降り積もる。

さらさら さらさら と
 静かに、白く、

リツは、静かに舞い散る粉雪を、涙で滲む眼でぼんやり眺める。

 
ふと、
 甘い匂いがした。

(どこから?)

そう思い、辺りを見回した。
そして、見上げた桜の木の上で、視線が止まる。


「あー、また降り始めたか…」

静かで低い、男の声。

桜の上、大きな枝の一つにその男はいた。


(人!?あんな所に?)





< 2 / 23 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop