粉雪舞い散る桜の匂い
涙で滲む世界は、粉雪で白く、薄らと降り積もる。
さらさら さらさら と
静かに、白く、
リツは、静かに舞い散る粉雪を、涙で滲む眼でぼんやり眺める。
ふと、
甘い匂いがした。
(どこから?)
そう思い、辺りを見回した。
そして、見上げた桜の木の上で、視線が止まる。
「あー、また降り始めたか…」
静かで低い、男の声。
桜の上、大きな枝の一つにその男はいた。
(人!?あんな所に?)