粉雪舞い散る桜の匂い
「…時間が過ぎて、今日のコトも想い出に出来る、その日まで、」
リツは桜の樹に額をつける。
「この桜の樹とも、さよなら、だなぁ」
「でも、ここはサクヤさんと出会えた場所でもあるから、〝イタイ〟だけの想い出の場所にならずにすみそう…」
サクヤを振り返り、リツは穏やかな笑顔を向ける。
「そう、…よかった」
リツの表情を見て、サクヤは微笑む。
「ありがとう、サクヤさん。またね」
そう言い残し、リツはサクヤに背を向け、歩き出す。
今日という日を思い出し、心が痛んでも、
次にはあなたを思い出し、
きっと、心があたたかくなる。