粉雪舞い散る桜の匂い

溢れていた涙のせいか、なんか頭がぼーっとする。


(涙!?)
 
ハッとなり、リツは慌てて目元を擦る。


「…上で、景色眺めてたら君が来て、何やら張りつめた空気だったろ?ーで、降りるに降りられなくてね…。気まずいよな、ごめん」

(みっ、見られてた!?ー全部っ!?)


ぐるぐる頭も眼も回る様な気がした。目元を擦る格好のまま、恥ずかしくて、顔が上げられない。

そんなリツの向かいで、男は新しい煙草に火を点けた。

燻る煙の匂いがリツに届いて、憶い出す。


 あの甘い匂いー

(そっか…あの匂い、この人の煙草だったんだ)


嫌な匂いじゃない。甘くて、優しいー

(あれ?でも…)

その時、気付く。


(この匂い、どこかで…)




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