好きだと、言って。①~忘れえぬ人~


まさか……。


まさかでしょ?


いくら浩二でも、そんな短絡的なことするか?


いくら、おちゃらけていたって、あれでも成人している二十五歳にもなる、大人なんだよ?


今時、小学生でもそんな分かりやすいこと、しないぞ?


「佐々木?」


う~、気持ち悪い。


脳みそを使いすぎて、なんだか、朝の偏頭痛まで復活してきた。


早く戻らないと、伊藤君に心配かけちゃうな。


そう思うけど、立ち上がれない。


「佐々木、大丈夫か?」


「え?」


ようやく。


私は自分が呼ばれていることに気付いて、膝に伏せていた顔を上げた。


すぐ目の前に。


本当、目と鼻の先に。


伊藤君のどアップがあって、私は全身ピキンと固まった。



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