好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
「どう言うつもりなの、浩二?」
開け放たれた襖にもたれるように立つ浩二を睨み付けて、低い声音で詰問する。
「何が? 言ってる意味が、分からないな。質問は、正確にしてくれないか?」
分からないと言いつつ、浩二の目は、全てを理解している目だ。
子供の頃から、一緒に育ったんだから、それぐらいは私にも分かる。
「今日のことよ。アンタが伊藤君に、私を誘うように頼んだんでしょ?」
「ああ、そのこと。伊藤とのデート、楽しかった?」
クスリと、愉快そうに、浩二が口の端を上げる。
なに、その態度!?
ムカツクったら、ありゃしない!
「だから、それがどう言うつもりなのかを、聞いてるの!」
「どう言うつもりも、こう言うつもりもないけど? まあ、強いて言うなら、ボランティア?」
開き直っているのか、さして動じる風もなく、浩二は口元に苦笑を貼り付けて、軽く肩をすくめた。