好きだと、言って。①~忘れえぬ人~


「裏でこそこそ画策して、私と伊藤君をくっつけて、それでハルカがアンタを好きになるって、本気で思ってるの?」


「さあ? 俺は超能力者でも霊能者でもないから、人の心の中までは分からないな。そんなに知りたいなら、ハルカ本人に、直接聞いてみれば?」


ハルカ本人に?


そんなの、聞けるわけがない。


ただでさえ、心臓の難しい手術を控えているハルカを煩わせるようなこと、聞けるわけがないじゃない。


コイツは。


言えるはずがないって、


黙ってるしかないって、分かっていてこんなセリフを吐いている。


私は今まで、佐々木浩二という男の何を見ていたんだろう。


お調子者だけどお人好しな良いヤツだって、そう信じていたのに。


浩二が、こんなヤツだったなんて。


なんだか、怒りを通り越して情けなくなってきた。


「……アンタって、そんなに卑怯なヤツだったの? 自分が欲しいモノを手に入れるためなら、他人がどうなっても構わないって、本気でそう考えているの?」


押さえきれない感情の波が、語尾を震わせる。

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