好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
もうこれ以上、何を言っても、浩二は聞く耳なんか持たないだろう。
それに、私が、二度と同じ手に引っかからなければ良いだけの話しだし。
浩二がどうあがこうが、ハルカの気持ちが変わるとも思えない。
いくら何でも、浩二だって、病床のハルカを傷つけるような馬鹿な真似はしないはず。
伊藤君に至っては、たぶん浩二の目論見を知ったら、殴り飛ばすことぐらいしそうだし。
だから、もういい。
――浩二とは、しばらく距離を置こう。
そして、伊藤君のことはもう忘れよう。
きっと。
それが、誰にとってもいい方法のはず。
『アンタなんかとは、絶交よっ!』
捨てぜりふを残して、浩二の部屋を逃げるように飛び出した私は、心の中で、そう決意していた。