好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
「亜弓?」
まっすぐ直也の腕の中に飛び込んで、ぎゅっと背中に両手を回せば、フワリと心地よく鼻腔に届く、慣れ親しんだ直也の匂い。
柔軟剤の爽やかな香りと、微かなタバコの匂い。
「どうした? 病気の友達、あまり良くないのか?」
直也は、そう言って、私の頭を労るようにポンポンと撫でる。
いつもは、子供扱いしないでよ! って嫌がるけど、なぜか今日はその仕草が妙に嬉しくて。
その手の温もりが、愛しくて。
「ううん。大丈夫。けっこう元気にしてたよ」
「そうか。それならいいが……」
心配そうな瞳に見つめられて、心の奥にズキンと走る罪悪感。
例え、この罪悪感が消える日が来なくても。
それでも。
この人となら、歩いて行けるはず。