好きだと、言って。①~忘れえぬ人~


「ねえ、これなあに?」


ツンと、腕に下げているコンビニの袋を指さすと、直也は何かを思いだしたように、ハッとした顔をした。


「アイス……」


「え?」


「ほら、この間、亜弓が食べたいって言ってた、いつも売り切れの期間限定、メロン・シャーベット。タバコを買いにコンビニによったら、たまたま残ってたんだ。で、買ってきたんだ……」


がさごそと、直也がビニール袋から取り出したアイスのカップ。


一振りすると、およそアイスが入っているとは思えない『ちゃぷん!』というコミカルな音が聞こえてきた。


「すっかり、溶けてしまったな……」


ちょっと残念そうに、浮かぶ苦笑。


――この人は。


いったいどれくらいの時間、私を待っていてくれたんだろう。

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