好きだと、言って。①~忘れえぬ人~


本当は、今週末も、ハルカのお見舞いに行く約束をしていた。


だけど、今回は、直也の予定を優先させることにした。


直也の誘いを、二回続けて断るのも気が引けたし、


お盆休みで直也の妹さんも帰郷してくるそうで、顔合わせには、ちょうど良い機会だろうと言うことになったのだ。


でも本音を言ってしまえば、今、ハルカの前で笑顔でいられる自信が、私にはなかった。


たぶん。


それが、一番の要因。


ハルカに会えば、どうしたって伊藤君のことを思い出しちゃうし、


もしも万が一、『バカ浩二と鉢合わせ』なんてことになったら、私は何を言い出すか分からない。


ハルカに向けられる、アイツのへらへら笑いを目撃した日には、


『ハルカ! こいつはとんでもない悪党なのよっ!』


と、名探偵よろしく暴露大会を始めてしまうかも。


そんなことになったら、目も当てられない。


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