好きだと、言って。①~忘れえぬ人~


「あのね、亜弓」


そこでいったん言葉を切って、礼子さんはちょっと自嘲気味な笑いを浮かべる。


いつも、艶やかに笑う礼子さんらしからぬその笑いに内包されるものを感じて、私は言葉もなく彼女をみつめた。


「犬や猫だって、三日世話をすれば、情がわくのよ」


えっ?


犬や猫って……。


なぜ、ペットの話し?


話の脈絡が掴めなくて、私は眉を寄せる。


トントントン、と


礼子さんは、綺麗に整えられたローズブラウンの爪の先で、リズムを取るようにテーブルの天板を叩いた後、とんでもないことをサラリと言った。


「男もね、同じよ」


「れ、礼子さん?」


そ、そんな乱暴な。


いくらなんでも、ペットと恋人を一緒くたにするのは乱暴じゃないだろうか?


正直、そう思ったけど、言葉にはならない。


ピンと張り詰めた痛いような空気を肌で感じながら、ただ、礼子さんの次の言葉を待った。

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