好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
「亜弓?」
「うん……」
再び直也に促され、
嫌な予感に怯えながら、恐る恐る、携帯電話を耳にあてた。
でも。
「……もしもし?」
呼びかけてみても、反応がない。
「もしもし? 浩二なんでしょ?」
「……亜弓」
聞こえてきたのは、今までに耳にしたことがないような、力のない浩二の声。
浩二にこんな声を出させる事態に思いを馳せて、背筋に冷たいものが走り抜ける。
「浩二……? どうしたの、浩二?」
我知らず、声が震えた。
「ハルカが……」
まるで。
無理にしぼり出すような浩二のその言葉尻に、微かな震えを感じて、私は思わず息を呑んだ。