好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

『二度と、会えなくなる』


わきあがる恐怖で、何をどうして良いのかわからない。


「ど……しよ……う」


全身に震えが走って、私は、もう切れている携帯電話を両手でギュッと握りしめて身を縮めた。


その両手さえ、ブルブル震えてしまいままならない。


その震えを止めようと、両腕で自分を掻き抱いた。


それでも。


震えは止まらない。


私の異変に気付いた直也は、事の成り行きを聞くと、すぐにハルカが入院している中央病院に向かってくれた。


渋滞を避けて、一般道の裏道を通っておよそ一時間の道のり。


まるで押しつぶされそうに恐ろしく長く感じる時間の重みに、私は車の助手席で必死に耐えていた。


怖くて、こっちから病院へは確認が入れられない。


浩二から連絡がないことが、『最悪の事態に至ってないことの証明』


そう自分に言い聞かせ、助手席でただ自分を掻き抱くことしかできない。

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