好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
もう、ケンカしていたことなんか、どうでもいい。
少なくとも、浩二は本気だ。
本気で、ハルカを思っている。
今の浩二の姿を見て、それがよく分かった。
なら、私がとやかく言うことは何もない。
「浩二っ!」
「亜弓……」
名を呼び走り寄ると、浩二は微かに口の端を上げた。
愛想の良いのだけが取り柄みたいなヤツなのに、その表情はおよそ笑顔にはほど遠い。
「浩二、ハルカは? ハルカは大丈夫なの!?」
思わず声を荒げる私に、「まだ分からないんだ」と、浩二は力無く頭を振った。
ハルカは、まだ危篤状態のまま――。
最悪の事態じゃないことに対する、ほんの少しの安堵感と、
まだ、最悪の事態に至る危険をはらんだままの状態だと言うことに対する、大きな危機感。
相反するを感情に囚われながら、私はイスに座るお二人に、深く頭を下げた。
「佐々木君、こちらの方達は?」
女性の方が、心持ち小首を傾げて、浩二に問うた。
――声と、
どこか少女めいた仕草が、ハルカによく似ている。
ハルカの、色素の薄い髪と瞳の色。
そして肌の色の白さは、きっとお母さんからの受け継いだものなのだろう。