好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

今の病院って、土足のままで良いのね。


大きな病院がみんなそうなのか、新しい病院がそうなのか知らないけど、


玄関でスリッパに履き替える小さい個人病院しか知らないから、ちょっとしたカルチュアー・ショックだ。


近代的な大きな病院の雰囲気に圧倒されつつ、私は浩二の後に続いて、三階にある外科の入院病棟に向かった。


が、エレベーターで三階に着いたのは良いけど、広すぎてどこに病室があるのか分からない。


確か、ハルカの病室は315号室。


エレベーター前のフロアで思わず立ちすくんでいたら、「こっちだ」と、浩二が迷う風もなくスタスタと歩きだした。


なんで浩二が、ハルカの病室の場所を知っているの?


と、不思議だったけど、よくよく考えれば、親友である伊藤君の彼女だもの。


前に、お見舞いに来ていたっておかしくはないと、思い当たる。


「あ、待ってよ!」


置いて行かれそうになった私は、慌てて浩二の後を追った。

< 55 / 223 >

この作品をシェア

pagetop