好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

それにしても。


もっと早くに教えてくれたら良いのにっ!


誰に口止めされたのか知らないけど、私にまで秘密にしておくことないじゃない?


なんて考えながら歩いていたら、浩二が立ち止まったことに気づかずに、背中に『ぐしゃっ』っと、激突してしまった。


って、ぐしゃっ!?


嫌な予感がして、浩二の背中と自分胸の間に、恐る恐る視線を落とす。


そこには、見るも無惨に押しつぶされた、ミニ向日葵の花束。


「うわぁ、花がっ!」


慌てて一歩後ろに飛び退いて、抱えていた花束を覗き込む。


潰してしまったかと心配したけど、ありがたいことに向日葵は強かった。


つぶれた包装紙をバリバリと元に戻すと、最初から何も無かったかのように元通りに復元した。


「よかったぁ……」


「ここだ」


浩二は、私の一人漫才を見ない振りして、パステルピンクのスライドドアの前でくいっと、あごをしゃくった。
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