好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
『三池ハルカ様』
ドアのネーム・プレートに、ワープロ打ちされたハルカの名前が貼り付けられている。
ここに、ハルカがいるんだ。
ごくり。
思わず、唾を飲み込む。
「じゃ、俺は喫煙室にでも行ってるから。面会が終わったら、声を掛けてくれ」
「え?」
なぬっ!?
ポソリと呟いて、スタスタ歩き出す浩二の行動にギョッとした私は、逃すまいとその腕を慌てて掴んだ。
「な、なんで? お見舞いしないの浩二!?」
「――俺は、前に来てるから、いいよ」
思わず声を荒げてしまった私に、浩二は少し苦笑めいた表情を向ける。
「だって、せっかく来たのに……」
「亜弓は、三池に会うのは久しぶりだろう? 女どうし、積もる話でもすれば?」
そ、そりゃ、そうだけど。
こ、この薄情ものっ。
一緒に来てくれたって良いじゃない!
とは、さすがに言えない。
私だって、二十五歳の、いい大人なんだから。