好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

デニム地の半袖シャツに、ブラックのジーンズ。


ラフな格好も様になっている。


なんて、見とれてる場合じゃないっ!


「これ、何ですか、いい年してドタドタと落ち着きがない!」


母のお小言なんか、耳に入っちゃ来ない。


「ど、どうしたの伊藤君!? ハルカに何かあったとか!?」


慌てふためいて、シュタッっと母の隣に座り込む私に、彼は心持ち不思議そうに小首を傾げた。


「三池? いや別に、何もないんだが……」


ああ、良かった~。


安堵感で思わず脱力してしまう。


肩の力がドッと抜けた私は、大きく息を吐き出しながら、ちゃぶ台の上に視線を落とした。


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