好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

よく考えれば、ハルカの具合いが悪くなったのだったら、何も伊藤君が直接来なくても、電話1本で用は足りるのだ。


じゃあ、


じゃあ、どうして伊藤君は、ここにいるのだろう?


昨日、病院で伊藤君とは、ほとんど個人的な話はしていない。


もちろん、会う約束なんてするワケもなく。


もしかして。


知らず知らずのうちに、伊藤君の気に障るようなことでも言ったのだろうか?


それで、文句を言いに……。


ううん。


そこまで思考を巡らせて冷や汗が吹き出しそうになった私は、自分の考えを思いっきり否定した。


伊藤君は、例え私が気に障る事を言ったのだとしても、それに対して文句を言うような、そんな人じゃない。


じゃあ、なぜ?


『伊藤君が自分を訪ねてくる理由』。


いくら探しても答えが見つからない私の思考は、忙しなくグルグル巡る。


けど。


やっぱり納得のいく答えには行き着かず、私は、おずおずと視線を上げて、伊藤君の顔にチラリと視線を走らせた。




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