好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
これはやっぱり、断るべきだったかも。
仮にも、私にはプロポーズしてくれている彼氏がいるわけだし。
伊藤君にも、ハルカって言うれっきとした彼女がいる。
どう考えても、私と伊藤君が二人だけで『お出かけ』して良い道理がない。
断るべきよ。
心のどこかで、『良い子の私』が、そう囁く。
でも。
それはあまりに小さな声で、すぐにかき消されてしまった。
「え……と、お任せします」
「そうか。じゃあ、適当にドライブでもするか」
そう言って、伊藤君は慣れた動作で、四輪駆動車をスタートさせた。