好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
海水浴シーズンの浜辺は、ちょうど夏休み中ということもあって、大勢の人で賑わっていた。
小さな子供がいる家族連れ。
ペットを連れた人。
友達どうし。
そして、恋人達。
サンサンと降りしきる真夏の太陽の下。
少し強い海風に乗って、波の音に混じった楽しそうな笑い声が、あちこちから聞こえてくる。
何度となく、想像してみたこんなワンシーン。
抜けるような青空。
白い、入道雲。
どこまでも続く海原を渡る風に吹かれながら、『あなたと二人』で、こんなふうに波打ち際を歩くこと。
一生、叶うことのない夢だと、そう思ってた。
「水着でも持ってくればよかったな」
楽しそうに水と戯れる子供達に、伊藤君は穏やかな笑みを向ける。