好きだと、言って。①~忘れえぬ人~


脳内を、伊藤君の海パン姿がグルグル周り、思わず顔に血が上る。


「そ、そうだねー」


そ、それは、ちょっと刺激が強すぎます、伊藤君。


ただでさえ心臓バクバクなのに、そんなあられもない姿なんて、絶対直視できないよ。


もう、鼻血ブーものです、はい。


なんて、本音を言えるはずもない私は、思わず笑顔が引きつった。


それにしても、


どうして、思うように言葉が出ないのだろう?


色々と、聞きたいこと話したいことは山ほどある。


……はずなのに。


いざこうして、その機会に直面すると、何も言葉が出てこない。


何も言わずにこうして隣を歩く。


伊藤君の気配を傍らに感じていられる、それだけで、もう胸がいっぱいになってしまう。


それは甘酸っぱくて、切なくて、幸せな感覚。


だけど。


その一方で、拭うことが出来ない罪悪感が心の奥にわだかまっているのも確かだ。


――私は、自分の恋人を、友達を、裏切っている。


その心の痛みは、消えてはくれない。


伊藤君は。


そんな気持ちになったりしないのだろうか?



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