好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
「あ、でも、伊藤君は、こんなんじゃまずかった?」
ホットドックを、モヒモヒ囓りながら質問したら、伊藤君はトウモロコシを豪快に囓りながら、不思議そうに目を瞬かせた。
「なんで? 俺も、こういうのけっこう好きだけど?」
「だって、プロのスポーツマンって、栄養管理も大変なんでしょ? こんなジャンク・フードでお昼をすませちゃったら、叱られない?」
「ああ。まあ、それなりにな。でも、大丈夫。叱られないよ」
私の『叱られない?』の言い回しが笑いのツボに入ったのか、伊藤君はおかしそうにクスクスと笑い出した。
それと連動して普段はつり加減の目尻が、キュッと下がる。
そのとたん。
鋭い感じが払拭されて、少年めいた表情がその顔に浮かんだ。
――ああ、この笑顔。
やんちゃ盛りの少年のような、屈託のないこの笑顔が、いっとう好きだった。
今も変わらない笑顔に、胸の奥が熱くなる。
ついでに、目頭も熱くなる。
ヤバっ……。
ここで泣いてみろ。
それこそ、挙動不審だ。
「でも、良かった」
「え?」
「元気になったみたいで、良かったよ」
「元気にって……?」
伊藤君の言っていることの意味がよく分からずに、私は眉を寄せた。