好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

「逃げられた……」


やっぱりこれは、何らかの思惑があっての、計画的な犯行ってこと?


はあっと、我知らず大きなため息が漏れる。


捕まえて、とっちめてやろうと思ったのに。


一気に膨らんだ怒りのエネルギーのぶつけ先が、無くなってしまった。


全身の力が、へなへなーと抜けていく。


ジリジリと、焼け付くような太陽の強い日差しに照りつけられて、


一瞬。


クラリと、軽い目眩に襲われる。


なんだか気持ち悪くなってきて、私はその場にしゃがみ込んでしまった。


自分の膝に額を付けて、今の状況を考えてみる。


その一。


浩二は、私が伊藤君に片思いをしているのを知っている。


その二。


浩二が、伊藤君に私を誘うように頼んだ。


そのココロは?

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