*powder snow ~空に舞う花~*
*涙と笑顔と
「…っ」
視線を逸らしてうつむいたまま千雪はなにも話さない。
なんで答えられないんだって、憤りがないわけじゃないけど
ま、予想通りの反応。
フウッとため息をひとつついて
「それに、お前の言ったこと間違いだ」
千雪の頭をポンと叩く。
「……」
やっと静かに顔を上げた千雪の瞳が潤んでいたのはすぐに気づいた。
「お前がなんで水泳のこと知ってるのか分かんねーけど……っ」
泳ぐのをやめた…
そう実際に誰かに口にしたことがまだ一度もないから、思わず言葉を詰まらせた。
「好き…だったの」
「…え?」
ゆっくり話し出した千雪の声は…少し震えていた。
「海斗が泳いでる姿、好きだったの…
すごく…すごく……」