*powder snow ~空に舞う花~*


「だから…
海斗に会いに行った」


最後にそっと紡いだ声。


「……」

桜の木の下で昼寝をしていたオレの前に現れた千雪が言った

『私…―…しかないの』
チャイムの音にかき消された言葉がやっと耳に届いた。




『私には、この心しかない』




だからといって、真意が分かったわけじゃない。



「どうして、オレなんだ?」

雨のカーテンを挟んで真意を問う。



泳いでいたオレを好きになったのなら…
どうして今になって現れた?

タイミングがいいとは言えないだろう?

もし、諦めるなとオレを水の中にもどしたい為だけなのなら……教えて欲しいことがある。




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