亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
真剣な会議中に鼻提灯を添えて豪快な寝息を立てられれば、嫌でも怒りの鉄拳と罵倒を繰り出さずにはいられない。
全身の毛を逆立てる猫の様にシャーッと威嚇するイブに、くわっと強く睨みつけると、リストは怒りを無理矢理押さえつけて目を逸らした。
…多少なりとも怒りを抑制出来るようになった自分を褒めてやりたい。
「…話を元に戻すぞ。それで…第一師団長………」
真摯な表情を浮かべる各師団長の面々は、会議室の中央に位置する広い円卓を囲んで意見を交わしていた。
視線を向けられた第一師団長は小さく頷くと、手元の羊皮紙を一瞥しながら口を開く。
「…はい。……以前、バリアンで軍事力強化を疑わせる動きがあると報告しましたが……それと関連しているかはまだ分かりませんが、また………不可解な点が…」
「…不可解?」
「はい。バリアンの国土から…微量ですが、魔力が感知されているんです…」
「……魔力くらい、感知されるのは当たり前じゃないか…」
険しい表情の部下に、何を今更…とリストは首を傾げる。
魔の者の存在が途絶えたフェンネルで魔力が感知されたのならば、不可解な事だが……場所はバリアンの国土である。
魔法や魔の者が息づいている場所から魔力を感じるのは当然の事であって、何も不思議ではない。
「…いえ……違うんです。問題は………その魔力が時折威力を増大させている事と……その威力が最も高い地点です…」
そう言うや否や、師団長は円卓の中央に古い地図を広げて見せた。
黄ばんだ羊皮紙に滲んだインクが描いていたのは、見慣れない地形…バリアンの地図だった。
森林や湖、街で埋め尽くされた自国の地図に反して、それは酷くこざっぱりなものだった。
えらく目立つ城の目印以外は、ほとんど何も無い。
砂漠を示す殺風景な空白の中に、首都やその他の街が頼りなさげに点在している。
この地図は随分昔に入手したものだと聞いたが、国土の地形はおろか街々の位置などはほとんど変わっていないらしい。
全身の毛を逆立てる猫の様にシャーッと威嚇するイブに、くわっと強く睨みつけると、リストは怒りを無理矢理押さえつけて目を逸らした。
…多少なりとも怒りを抑制出来るようになった自分を褒めてやりたい。
「…話を元に戻すぞ。それで…第一師団長………」
真摯な表情を浮かべる各師団長の面々は、会議室の中央に位置する広い円卓を囲んで意見を交わしていた。
視線を向けられた第一師団長は小さく頷くと、手元の羊皮紙を一瞥しながら口を開く。
「…はい。……以前、バリアンで軍事力強化を疑わせる動きがあると報告しましたが……それと関連しているかはまだ分かりませんが、また………不可解な点が…」
「…不可解?」
「はい。バリアンの国土から…微量ですが、魔力が感知されているんです…」
「……魔力くらい、感知されるのは当たり前じゃないか…」
険しい表情の部下に、何を今更…とリストは首を傾げる。
魔の者の存在が途絶えたフェンネルで魔力が感知されたのならば、不可解な事だが……場所はバリアンの国土である。
魔法や魔の者が息づいている場所から魔力を感じるのは当然の事であって、何も不思議ではない。
「…いえ……違うんです。問題は………その魔力が時折威力を増大させている事と……その威力が最も高い地点です…」
そう言うや否や、師団長は円卓の中央に古い地図を広げて見せた。
黄ばんだ羊皮紙に滲んだインクが描いていたのは、見慣れない地形…バリアンの地図だった。
森林や湖、街で埋め尽くされた自国の地図に反して、それは酷くこざっぱりなものだった。
えらく目立つ城の目印以外は、ほとんど何も無い。
砂漠を示す殺風景な空白の中に、首都やその他の街が頼りなさげに点在している。
この地図は随分昔に入手したものだと聞いたが、国土の地形はおろか街々の位置などはほとんど変わっていないらしい。