亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
二人とも、根はいい人であるというのは分かっている。
だが、恐怖や不信感とは違う二人への違和感が、どうしても拭えないのだ。これは、何なのだろうか。自分は、何を怖がっているのだろうか。

そう自問自答してみるが、大していい答えは帰って来ない。これは憶測なのだが…自分は多分…。


……彼等の敵に向ける戦意、殺意…そういったものに、畏怖しているのではないだろうか。


他の面々とは違う、敵に対する憎悪。特にレヴィはそれが一際巨大で、あまりにも真っ直ぐで、あまりにも鋭利で……討つべき敵は一緒なのに、時々…彼の考えについていけない時がある。
ロキの場合は、それとはまた違う。彼の敵に対する憎悪は、憎悪とは言い難い何か。どちらかと言えば正義感に近いものなのだけれど…正義を語る陽気な言葉の根底に、彼にしか理解出来ない思いがあるようで……そしてそれは気分屋な彼の冗談に上手く覆われていて…結局、彼は彼を見せてくれない。その見えない本心が、ある種の違和感を覚えさせているのかもしれない。


そうだ……僕等は、仲間なのに。


それなのに。






「…僕は分かっているつもりだったけど………ちょっと考えてみれば、本当は僕は………あの二人の事を、何も知らないんだな…」

「……ウー…ァ…?」


何を今更な事を、と無知な自分にライは嘲笑を浮かべる。
革命、敵への憎悪に賛同し、彼等と共にひた走っていて気付かなかったが…。


国家討伐に動く彼等のこれまでの経緯や、そのきっかけや、一人の人間としての過去を……ライは、知らない。





一番大切なことを、知らないのだ。
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