亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
黒のキャンパスに散りばめられた星屑の輝きも見えぬ、砂漠の下。
世間に隠れる様にひっそりと大地の下にある仄暗い穴蔵の中。
互いに異質だけれども、互いに手を合わせる一人の青年と、一人の少女。
そこは誰の目も無く、隔離された空間の様で、そこにいることを選んだのは自分なのに、それでも少しだけ寂しいと思う自分がいて。
少し前までは、独りで焚き火を前に静寂と共に悪戯に時を殺していた。
独りを好むこともあり、その静寂は決して嫌いではなかった。
独りは、平気だったのに。
他人の温もりと、じゃれる子猫の鳴き声と、意味を持たない少女の声が傍に無いと………今は、何故だか落ち着かないのだ。
仲間はいる。
共に刃を握り、同じ志を持って歩いてくれる仲間がいる。
独りで生きていく事を覚悟していた自分には、そんな彼等がいてくれるだけでも贅沢なのに。
「………ティー、ここで穴掘りは禁止だよ。…こら、埃が立つから駄目だって!」
空いている片手でヒョイと穴掘り作業をしていた子猫をつまみ上げ、サナの膝元に置いた。
長いサナの黒髪に前脚を伸ばしてじゃれ始めるティーを見下ろし、サナが笑みを浮かべる。
最近、少しずつ笑う様になった彼女の可愛らしい笑みにつられて、ライも思わずはにかんだ。
僕は充分色んなものを与えてもらっているのに。
案外欲張りなのだろうか。
それらとは少し違う、人恋しさというものに惹かれているのかもしれない。
近頃、胸の奥がなんだか妙にくすぐったくて、温かい気がする。
これが何なのかだなんて考える暇など、僕には無いのだけれど。