亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~


十代半ばか、前半くらいか。
砂利や埃で汚れていてその顔立ちはよく分からないが、自分よりもまだ幼く見える。


奴隷運搬用の荷車にいるのだ。奴隷として何処からか攫われてきたのかもしれない。
いつもならここで…助けてあげないと…と、世話焼きのライならば当たり前の様に反応するのだが。





今は、それどころではない。






彼の頭の中が、それどころではない。








……捲りあげた布の下の少女の姿は………青少年には、少々刺激の強過ぎるものだった。





細い肩が肌蹴ているとかではない。
真っ白な足が覗いているとかではない。
くびれた腰がちらつくとかではない。




……それどころの、問題ではない。















少女は、何も身に付けていない全裸だった。













数秒の間を置いて、反射的に布を少女に被せ直すも…時既に遅し。


外界に広がる砂漠の色や熱を超えるくらい、一気に体温は急上昇し、鏡で見るのが恥ずかしくなるほどに顔は紅潮し…。

臨界点を、突破した。















「―――い……ああああああああぁぁ!?」
















一人の青年の叫び声が上がったが、この広大な砂漠の世界は無慈悲にも、砂風で攫っていくだけだった。

本の少しだけ肌寒さを覚えさせる風が、すぐそこまで来ている夜の訪れを教えている。
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