亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
「…あの国は大胆だな。…稀に見る革命児か、それともただの無法者なのか………三年前のデイファレトの新王即位にも何らかの手助けをしたとも聞くし………あの国の女王陛下様の動きは、風を読む俺達にも掴めないな」

「風を通り越して嵐かもな」


女王陛下が君臨してからというもの、国交に積極的な隣国フェンネルは、このバリアンに何度も使者を送って接触をはかろうとしている。
それは時に文に止まらず、数年前には陛下自らが赴いたらしい…とも耳にしたが、それは果たして本当だろうか。

玉座を放置して国を離れる王など、今まで聞いたことが無い。





「その嵐が仕切るフェンネルですが、最近は妙に動きがあるみたいで……デイファレトにも使いを送っているみたいです」

「見下ろす側の人間の考える事ってのは、俺達凡人のそれとは斜め上を向いているのかもな。………しかし…俺が一番理解出来ない人間は、やっぱり…」

溜め息を漏らしながら頬杖を突き、げんなりとした表情でロキは断言する。

「………老王の後釜。…今のバリアン王である、糞ガキだ」



沈黙する銀縁眼鏡も不気味だが、ロキ達の中で今最も頭を悩ませている人物は…言わずもがな、国家の親玉であるバリアン王51世だ。

即位してからこの三年間、表に出て来る事も無ければ、噂話にさえ名前が出ない程に、謎が多い。
はっきり言っているのかいないのかも分からないこのバリアン王の存在。老王の時とは違う状況に、三槍は非常に戸惑っているのだ。

バリアン王51世は、成人にもなっていないまだ十五の青年であると聞く。
その人格はまだまだ不明だが…過去に実の父と兄を手に掛けた事を思い返せば………決して、好青年ではないだろう。
むしろ、老王よりも戦略的で頭のキレる……厄介な王かもしれない。




「……相手の出方を見定めない限り、迂闊に動くのは危険です。…とにかく、まだまだ様子を見るしかありませんね…」

「……あと何年待てばいいんだか…」

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