あなたの隣
「…あっ、」
彼を呼び止めようとしたがもう遅い。
また名前を聞きそびれてしまった。
「せっかく話せたのに…」
溜め息を漏らしながら、ふと彼から渡された水色のタオルを見ると、
"八重高校サッカー部"
と刺繍してあった。
八重高校サッカー部…。
サッカーしてるんだ…。
彼の事を少し知れた気がして、あたしの口元がまた緩みだした。
「サッカーか…。見てみたいなあ…」
シュート、めっちゃ決めてそう~っ。
ユニホーム姿、かっこいいだろうなぁ…//
あたしはニヤニヤしながら鞄を拾い、携帯を取り出した。
開いて時間を見ると、さすがにヤバい時間になっていた。
「うわわわわっ!!もうこんな時間!?!?遅刻しちゃうっ!(泣」
あたしは、膝の怪我などすっかり忘れて、全力で改札を走り抜けたのだった。