あなたの隣

「…あっ、」

彼を呼び止めようとしたがもう遅い。

また名前を聞きそびれてしまった。

「せっかく話せたのに…」

溜め息を漏らしながら、ふと彼から渡された水色のタオルを見ると、
"八重高校サッカー部"
と刺繍してあった。


八重高校サッカー部…。

サッカーしてるんだ…。

彼の事を少し知れた気がして、あたしの口元がまた緩みだした。

「サッカーか…。見てみたいなあ…」

シュート、めっちゃ決めてそう~っ。

ユニホーム姿、かっこいいだろうなぁ…//

あたしはニヤニヤしながら鞄を拾い、携帯を取り出した。

開いて時間を見ると、さすがにヤバい時間になっていた。

「うわわわわっ!!もうこんな時間!?!?遅刻しちゃうっ!(泣」

あたしは、膝の怪我などすっかり忘れて、全力で改札を走り抜けたのだった。
< 6 / 10 >

この作品をシェア

pagetop