恋
すべての買い出しが終わると、全部俺がもつって言ったのに、
深晴ちゃんは半分持つと言って聞かなかった。
「重くねー?」
「大丈夫、です」
見るからに重そうにしていたから俺は、
「黙って持ってもらってろ」
「ちょ、いーって言ってるのに」
「こういうことは男に任せればいいんだよ」
どっちも一歩も譲らない感じだったけど、深晴ちゃんが折れて、それから黙ったまんまだった。
「深晴ちゃんはさ、英の事好き?」
「好きですけど、先輩には関係ありません」
「そうだけど……」
軽く流されて、また会話が終わってしまった。
少し、深晴ちゃんが足を早めると、曲がり角から乗用車が速いスピードで走ってきた。
それなのに
深晴ちゃんは逃げようとしなかった。
じっと、車を見て……
「あぶねー!!」
俺は、深晴ちゃんの腕を引いて、こっちがわに寄せた。
「大丈夫ですか?すみません」
車から、女性が出てきた。
何も話さない深晴ちゃんの代わりに俺が大丈夫です、と答えた。
「あっぶねーだろ!何してんだ!」
「……ないでよ」
「あ?」
か細い声に俺は聞き返した。
「助けないでよ!」
「は?お前何いってるかわかってんの?」
「私は、助けてなんてほしくなかった!!」
「……お前が死んだら、家族が悲しむだろ、それに引いちゃったあの女性は捕まるんだぞ?」
俺の言葉に、深晴ちゃんはうつむいた。
「…自分のしようとしたこと、考えろ」
俺は深晴ちゃんの頭をポンポンと撫でた。
しばらくそうしてから、家に戻った。