深晴ちゃんを気になり出したのは、去年の夏。


ちょうど暎が事故に遭った1カ月後。






深晴ちゃんが中庭のベンチに座っていた。



俺は不謹慎にも、悲しそうな、誰かを、遠くを見ているような顔や瞳に目が釘付けになってしまった。




自分で言うのもあれだけど、俺は女に苦労はしなかった。


自分から寄らなくても、向こうからよってくるし。


だから、深晴ちゃんを好きになってビックリした。


俺が、自分から女を好きになるなんて今までなかったし、何より驚いたのは、女を前にして何もできない自分がいたことだった。




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