片思い

「遥汰!」


仁志が中庭から俺のクラスに来た。


「仁志、いーのか?深晴ちゃん置いてきて」


「あいつもクラス戻ったよ」


「へー、で?何?」


なんとなくばつが悪そうな仁志は、俺とあまり目を合わそうとしなかった。



「深晴がごめんな…あいつ冷たい奴じゃないんだけどな」


「……いーよ、死んだ奴に勝とうなんて無謀だ」


「……」


べつに仁志が悪い訳じゃないのに、なんとなく当たってるような言い方になった。


「俺さ、深晴にはもう新しい奴見つけて欲しいんだ」

意外な言葉が聞こえて俺は驚いた。


「だから、遥汰に暎を忘れさせてほしかったんだ…遥汰には失礼かもしんねーけど」


「本当だよ、俺は本気で好きなのに」


「悪い、でも、もう深晴の寂しい顔をみたくないんだ」


あぁ、あの顔か…。


「…明日さ、学校ねーし親いないから遊びに来いよ、うちに、なんなら泊まりにこい。」



「遊びにいって平気なのかよ、ましてや泊まりなんて深晴ちゃんが嫌がるだろ」


「嫌がろうが可愛い妹の為だ!嫌われるの覚悟だな」

「俺は嫌われたくねーし…でもしかたねーからいったるよ」




しかたねーからって言ったけど、本当は行きたかっただけだったり……
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