空悟~大切な君~
制服を着ていた俺は鞄を手に取り玄関に向かおうとした時、
「兄ちゃん、いってらっしゃい」
その声に振り返ると、空悟が手を振っていた。元気な姿と笑顔で。
それを見た俺は思わず鞄を置き、空悟を抱き締めた。
「兄ちゃん?」
助かった。空悟は助かったんだ。空悟がこんなに温かく、大切な存在だと何で気付かなかったのか分からない。こんなに愛くるしい笑顔を見せる空悟を、何で死ねばいいなんて言えたのか。
神様ごめんなさい。母さんごめんなさい。
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