空悟~大切な君~
「だからと言って…」
涙が溢れてきた。
確かに立派だが、海斗はまだ子供。俺の大切な…。これ以上大切な存在を消したくない。もう、残されるのは嫌だ。
侍は俺から離れ、背を向け歩き出した。その背中に俺は声をかけた。最後の希望を込めて。
「どうする事も出来ないのか…」
侍は、振り返りもせず言った。
「出来ぬ」
そして侍は去って行った。俺は空を見上げたまま泣いた。
「美樹…」
子供が出来た時に妻に約束した。
俺は俺の家族を守る、と。
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